神経締めの効果は魚の旨味に関係あり!どこよりも詳しい本当の理由!

料理技法


魚の神経締めの効果には魚の旨味と密接な関係がある!

「神経締めすると死後硬直を遅らせて鮮度が保たれる」

私は正直この答えでは、
何故か納得できないですよね。

「神経締めをすると何で死後硬直が起こる?」
「死後硬直が遅れると何で鮮度が保たれる?」

?????

そこには、
魚の旨味成分と密接な関係があります。
ここを知ることで全てが繋がってきます。


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魚の旨味成分のメカニズム

魚の旨味成分は大きく分けて、
【グルタミン酸】
【イノシン酸】
の二つ。

この旨味成分の名前、
聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

この旨味成分の掛け合わせこそが、
『日本人が好きな味』と言われているもので、

身近なもので例をあげると、
カツオだし
そうです。

グルタミン酸:昆布
イノシン酸:かつおぶし

この相乗効果が”美味しい”を作り出すのです。


魚もこの成分によって旨味を感じられるのですが、
この2つの成分の特徴として、

【グルタミン酸】
魚の体内に初めから存在するもの

なのですが、

【イノシン酸】
魚が生きているうちには殆ど存在しないもの

では、
このイノシン酸はいつ生成されるのかでしょうか?

よく言われるのが、
”魚が死んでから”
おそらくここら辺はみなさんご存知かと思います。


そしてここからが核心部分です。

・旨味成分が作られる過程
・死後硬直はその過程
・神経締めの効果

実際、
これらが密接に関係しているので、
神経締めや、死後硬直だけの話だけしても、
何かもやもやするのです。


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まずはイノシン酸ができるまでの過程

まずは、
魚の死後の形成される、
旨味成分”イノシン酸”のお話から。


美味しい魚とは、
”旨味成分の蓄積が多い魚”のことを指します。


私たちが普段食べている魚の身は、
魚の筋肉でして、

その筋肉は、
ATP(アデノシン三リン酸)
という物質をエネルギー源として動きます。

これがいわゆる、
”イノシン酸の素” なのですが、
酵素などの働きで次のように分解され変化していきます。


それが、

三リン酸(ATP)

ニリン酸(ADP)

一リン酸(AMP)

イノシン酸(旨味)

イノシン(臭み)

その生成過程の途中で、
イノシン酸が生成されるわけですが、

変化の流れとして、
一定の時間が経つと”旨味”になり、
その後”臭み”に変わってしまう


ここまでは納得していただけたでしょうか?


これを踏まえての、
【神経締めの効果】
です。



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神経締めの効果と旨味成分

神経締めの効果でよく聞くのが、
『死後硬直を遅らせる』

これは間違いではないのですが、
説明には不十分。

ではいきます。

先ほどイノシン酸の素は、
ATP(アデノシン三リン酸)
とお伝えしました。

イノシン酸は生きている時には、
ほぼ存在しませんが、

イノシン酸の素の、
ATP(アデノシン三リン酸)は存在しています。



ということは、
ATPを多く含む魚は旨味が多い魚
とも言えます。



しかしです。
ATPは生存活動のエネルギー。
つまり、動いたり、ストレスを感じるだけでも、
ATPは消費してしまうのです。


そこで登場するのが、
【神経締め】
です。

神経締めの本当の効果は、
『水揚げ後の動きによるATPの消費を最小限に食い止める』
ため、そして、
『魚の体内にたくさんのATPを消費させずに残しておく』
です。



魚の死後は、
ATPを作り出す活動は一切停止してしまうため、
死後のATPは消費する一方。


そこで、
暴れたり、動かないようにするために、
脳や脊髄からの伝達をシャットアウトさせて、
一切ATPを消費しないようにさせてしまう

これこそ、
神経締めの意味と効果なのです。


もう少し具体的な流れは、

神経締めをして大量のATPを残す(消費させない)

ATPの分解に時間がかかる

イノシン酸がピークとなる時間が遅れる(熟成)

臭み成分の生成も遅れ鮮度が長持ちする

死後硬直は、
熟成ピークの前なので、
ATPの数が多ければ死後硬直までの時間も遅れます。


確かに、
『神経締めは死後硬直を遅らせる』
ねですが、

一番言いたいのは、
『ATPの消費を防ぎ、魚の体内に多く残す』
だから、
『死後硬直が遅れる』のです。


ちなみに、
”活け締め”の場合ですと、
締めてもまだ跳ねたり、動いたりするので、
ATP消費を完全には防げていないのです。

だいぶ話が長くなりましたが、
神経締めをする理由と効果は、
なかなか科学的なのです。

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神経締めした魚の見分け方

神経締めした魚の見分けることは可能です。

神経締めは、この写真のように、

神経締め

額部分に穴を開けて、
針金やワイヤーで脊髄をグリグリするので、

額に穴が空いていれば、
神経締めされた魚ということになります。


現在では、
漁師さんや漁港などでも神経締めは行われており、
魚の鮮度を保ちながら消費者の下に届ける意識は、
以前より格段に高まっています。


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コメント

  1. より:

    たんとさんお久しぶりです。海です。
    何となく知っていた神経締めについて詳しく学ぶことができました。ありがとうございます!

    神経締めをしてATPの消費を防ぎ、熟成させて旨味を増やしているのなら、飲食店で見る、生簀から魚を捕ってきて直ぐに提供するというのは、魚の鮮度は良いが旨味成分は少ないという事になるのでしょうか??
    もしお時間ありましたら、ご回答していただけると嬉しいです。

    • tanto より:

      海さん

      1人でも私の情報を、
      見続けてくれている人がいる…

      とても嬉しい返信でございました。
      本当にありがとうございます。

      では本題の方へ。

      そうですね。
      生きている魚のその場での調理は、
      旨味を引き出せていない状態。

      なので、
      旨味=美味しいさの点では、
      物足りないと思います。
      (私はやりたくないですね)

      ただ、死んでからの提供が早いと、
      “ぷりぷりとした食感”や”歯ごたえ”
      というものは楽しめるので、

      どちらを主眼に置くか?だと思いますね。

      今では、熟成肉ならぬ、
      熟成魚を食べさせるお店もあるくらいです。
      (ググると出てきますよ)

      個人的には、
      旨味を引き出してから、
      魚を食べてもらう方が、

      料理人として、
      “仕事”をしてるかな⁈という感じですかね。

      もっと役に立つ情報を配信していけるよう、
      頑張ります。
      ありがとうございました。

      • より:

        たんとさん
        3年前、初めて進路について相談させていただいた時以来、たんとさんの言葉がとても心の支えとなっています。本当に感謝しております。
        私は今年で大学3年生になりましたが、料理以外の+αを身につけられるよう、たんとさんの言葉を思い出し、意識して生活していきたいです。

        なるほど。どちらに主眼を置くか!
        熟成魚調べてみます。ありがとうございました!これからも記事楽しみにしております。

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